2010年2月20日土曜日

ミッシェル・ドゥギーって?

「ところで、ミッシェル・ドゥギーってどんな作品を書いてる人なの?」
という素朴な疑問にお答えして…

フランスの詩文学・哲学・歴史・社会学・その他諸々を知らなくても、何となくイメージが掴めるような気がする(と独断と偏見で選出した)作品をご紹介します。


   横臥像 [横臥像/消去:1985]

僕は君をこのホテルの部屋から失い続けてる
裸で横向けの君はそこでぼくに叫んだ、出てって
ぼくはもう思い出せない、ぼくらの喧嘩、ぼくの過ちを
思い出すのは壁紙、反った君の背中、
日の光と戸棚の静物画、
そして君にまた会いに行くことを疑わない突っ立った苦しまないぼく



   近寄せる [奇数/5 熱帯地方に:2001]

近寄せるには二つの反対の意味があるようだ――

 隔たりを決める、真ん中を、妥協点を探す、「私は議論の中で彼らの見解を接近させた」と人が言うときのように……
 そして二つの両極端または二つの無縁のものを並列する、二つの極を、デュカス―ルヴェルディ―プルトンの言う二つの「とても離れた現実」を同格に置く、等。それは程度を弱めること、あるいは極端化することだろうか――それらの極が「触れ合うほど」、さらに重なり合うほど隣接するように、「コントラスト」が、それ自体分離できる第三者であるかのごとく「飛び出す」ように? 目標は矛盾語法(オクシモール)または曲言法(アンダー-ステイトメント)だろうか? 曲言法は矛盾語法の巧妙な凝った味方であり得るだろう――コマ落としのスローモーションのように。


   世界の動き… [デュ=ペレーの墓/周辺:1973]

それで永遠ならぬ生はどんな調子だろう?
光があった 謎があった
そしてそれがあった

謎があった 光があった
存在が それに 現れた
謎があった 光があった
そしてあった 地がテーブルの真ん中に

弱者たちの力がこれでなければ誰?


※上記3点ともに、ミッシェル・ドゥギー選集『愛着』(丸山誠司=訳)より引用

※個人的には連結(1978)が好きで、中でも特に「ディズニー・ワールド」が面白いと思ったのですが、ディズニー好きな方には必ずしも素敵な表現ではないので、掲載は差し控えました。
ご興味がある方は、AFSにて当選集を所蔵しておりますので、ぜひご覧ください。

以上は、理解しやすいと思われることを基準に勝手に選ばせていただいた作品ですが、
この選集(『愛着』)は、詩や哲学を全く知らない人が読んでも、書いてあることが殆ど理解できなくても、とにかく「この人はすごい!」ってことだけは分からせてくれます。

どれだけすごい方なのかは、3月18日(木)に東北大学で行われる講演会でご本人に直接会ってお確かめください☆